変わり種のアニオンを操る

金属酸化物などのイオン性固体をターゲットとして機能性物質を探索する場合、その構成元素のうち、陽イオン(カチオン)になりやすい金属元素の働きが重視されます。例えば多くの超伝導体や磁性体であれば遷移金属のd軌道が、透明電子伝導体であればインジウムとスズなどが重金属のs軌道が重要な役割を果たしています。一方、陰イオン(アニオン)となる酸素などの典型元素は陽イオンに配位しているだけで、何もしていないように見えます。しかし、カチオンに配位するアニオンの種類を変えたり、多種にすると、多彩な結合状態や結晶構造をつくることが可能になり、元素の隠された性質を引き出すことができます。そこで、私たちの研究グループでは水素などの通常ではカチオンになりやすい元素がアニオンとなっている物質、空隙に捕捉された電子がアニオンとして振る舞う物質(エレクトライド)および混合アニオン系物質に注目し、 超伝導体や新奇の電子伝導体・磁性体など固体中の電子の動きを利用した、新機能の探索を行っています。(次: 研究手法)

phase-diagram

鉄系超伝導体LaFeAsO1−xHx
O2−を水素アニオンH置換することで高濃度電子ドーピングを実現(Nat. Commun. 3, 943)

IrSe2


超伝導体IrSe2
Se2−分子陰イオンが寄与(PRL 109, 217002)

酸水素化物反強磁性体Sr2VO3-xHx (JACS 136, 7221)

混合アニオン反強磁性金属LaFe2AsN (APL Mater.3, 041509)

Ca2N


2次元エレクトライドCa2N
(Ca2N)+層間の電子が2次元電子ガスとして振舞う (Nature 494, 336)

C12A7e


エレクトライドC12A7:e
ケージ内の電子により,CaとAlという典型金属の酸化物にもかかわらず,高い電子伝導性を示す (Science 301, 626)