Research

本研究室では電子状態計算を援用することで、新しい結晶構造や従来ない元素の組み合わせをもつ機能性物質・材料を設計し、実際に合成することを行っています。特に、従来の無機化合物では脇役と考えられてきた陰イオン(アニオン)を複数種含む複合アニオン物質、電子がアニオンとして振る舞う電子化物(エレクトライド)および金属元素がアニオンとして存在する物質に注目し、超伝導体や新奇の電子伝導体など固体中の電子の動きを利用した、機能性物質の探索を行っています。従来、金属酸化物などのイオン性固体をターゲットとして機能性物質を探索する場合、その構成元素のうち、陽イオン(カチオン)になりやすい金属元素の働きが重視されます。例えば多くの超伝導体や磁性体であれば遷移金属のd軌道が、透明電子伝導体であればインジウムとスズなどが重金属のs軌道が重要な役割を果たしています。一方、陰イオン(アニオン)となる酸素などの典型元素は陽イオンに配位しているだけで、何もしていないように見えます。しかし、カチオンに配位するアニオンの種類を変えたり、多種にすると、多彩な結合状態や結晶構造をつくることが可能になり、元素の隠された性質を引き出すことができます。
(次:変わり種のアニオンを操る)