単一核スピンと量子演算

スピンは量子ビットの実体として有望視されている量子力学的自由度であり、量子ドットや分子集合体における個々のスピン制御技術の確立、スピン高集積化等が急務とされている。高集積化という観点から考えると、基板上の原子・分子の高い自己組織性は原子レベルで高度に整列したスピン配列や、演算・読み出しのためにスピンに接続されたナノスケール回路を提供しうる可能性を秘めており、固体ベースの原子・分子を利用した回路(分子接合回路)の構築における一つの指針を与えている。

そこで本稿筆者は核スピンを有する単一分子に電極を接合した分子接合を基本単位とする分子接合回路を想定し(上部バナー右端)、共鳴トンネリング非弾性電子散乱と共鳴磁場パルスを利用することで、個々の核スピンへの選択的演算/読み出しが制御(スイッチング)可能となるHyperfine Switching機構の存在を第一原理計算により明らかにした。このHyperfine Switchingの本質は、ターゲットとなる核スピンに対して、金属電極原子の軌道が十分に張り出していることによる効果的なHyperfine interactionの存在と、その金属原子の軌道が共鳴トンネリングを示す伝導チャネルを提供していることであり、Pd金属原子が本システムの重要な構成要素となっている。

参考となる文献(学術論文リスト):26
参考となる文献(著書リスト):2,3

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