細野秀雄教授と郭建剛、雷和暢両博士研究員らは、液体アンモニアを溶媒とする低温合成法(アンモノサーマル法)により、鉄系超伝導体の一つである鉄セレン化合物(FeSe:Tc=8K、Kは絶対温度)にナトリウム(Na)とアンモニア(NH3)を層間挿入してTc=37Kから45Kの新しい超伝導体を発見し、その組成、構造を決定した。
また、銅酸化物系超伝導体で見られた層間距離とTcとの関係が、今回発見した物質系には見られないことを突き止めた。これは新たな超伝導物質探索指針につながる知見と言える。
FeSe系は特殊な薄膜系において100Kを超えるTcが報告されるなど、注目を集めている素材であり、バルク材料(かたまり)でも高いTcが得られることが期待される。またこの物質系は通常の高温焼成法で作ることができず、今回用いたアンモノサーマル法は超伝導体合成法としても有効な手段になっていくと考えられる。
掲載誌: Nature Comunications 5, 4756(2014)
題目: Superconductivity and phase instability of NH3-free Na-intercalated FeSe1-zSz
(和訳:NH3を含まずにNaをインターカレートしたFeSe1-zSzの超伝導と相の不安定性)
著者: Jiangang Guo, Hechang Lei, Fumitaka Hayashi and Hideo Hosono
DOI: 1038/ncomms5756