東京科学大学ロゴ
総合研究院 元素戦略MDX研究センター
JP EN
MDXEXロゴ
ホーム研究トピックス
2025.06.27 酸化物半導体を触媒に用いたCO2のメタノール変換

研究トピックス

2025.06.27 酸化物半導体を触媒に用いたCO2のメタノール変換

元素戦略MDX研究センターの細野秀雄特命教授らと、三菱ケミカル株式会社 Science & Innovation Centerの共同研究チームは、N型酸化物半導体を触媒として用いた二酸化炭素(CO2)からのメタノール合成反応を検討し、高活性を実現するための支配因子を明らかにしました。

CO2の水素化によるメタノール合成は、CO2の回収と再利用への有能なアプローチで、カーボンニュートラルの観点からも重要です。この反応には安定なCO2を活性化する触媒が不可欠で、銅を担持した酸化亜鉛触媒(Cu/ZnO触媒)が多く使われています。しかし、一酸化炭素(CO)を発生させる副反応が生じるため、メタノール合成の選択性が低いという問題がありました。本研究では、半導体科学に基づいて、触媒の電子構造と電子キャリア濃度が水素の活性化において重要な役割を果たすと考え、さまざまなN型酸化物半導体の触媒活性を検討しました。その結果、ディスプレイの駆動に広く使われているアモルファス酸化物半導体a-InGaZnOx(a-IGZO、通称イグゾー)が、優れたCO
2変換性能を有することを見出しました。今回の研究で、伝導帯下端(CBM)とユニバーサルな水素の電荷遷移準位との位置関係から、インジウム系酸化物半導体が多量の水素を取り込み、電子キャリアと負に帯電した水素が生成することが予見されました。これらの考察をもとに、酸化物半導体上の水素と吸着したCO2との反応によってメタノールの生成が促進される触媒メカニズムを提案しました。

今回の成果は、CO2の水素化のみならずさまざまな化学反応に半導体中の電子や正孔、水素種およびそれらのダイナミクスを活用することの有効性を示すとともに、触媒や電池といった化学デバイスの新しい設計指針につながるものと期待されます。

本成果は、6月15日付(現地時間)に米国化学誌「Journal of the American Chemical Society」誌にオンライン公開されました。



詳細はこちら

Copyright © Institute of Science Tokyo. All rights reserved.