総合研究院 元素戦略MDX研究センターのZhang Zhujun(ザン・ズージュン)特任助教、北野政明教授、細野秀雄特命教授、物質理工学院 材料系の宮下和聡大学院生(博士後期課程1年)らの研究グループは、ケイ酸塩化合物の一種であるケイ酸バリウム(Ba3SiO5)内の酸素の一部をヒドリドイオン(H−)および窒化物イオン(N3−)に置き換えた新物質「Ba3SiO5-xNyHz」の合成に成功しました。さらにこの新物質は遷移元素を全く含んでいないにもかかわらず、遷移金属触媒の中で最も高活性なルテニウム触媒よりも高いアンモニア合成活性を持つことを発見しました。
水素キャリアとして近年注目されているアンモニアの低温・低圧下での合成が注目されており、世界中で触媒開発が行われています。アンモニア合成では、原料ガスの窒素分子の活性化が重要で、窒素と結合を形成しやすい遷移金属を触媒の活性成分に含めることが、触媒設計として必須でした。
この新物質「Ba3SiO5-xNyHz」は、結晶格子中のH−およびN3−が比較的低温で脱離し、欠陥サイト(結晶格子に空いた穴のような部分)が形成され、そこに電子が捕捉されます。このアニオン(陰イオン)欠陥に捕捉された電子が、窒素および水素分子を効率良く活性化し、遷移金属サイトが無くてもアンモニア合成反応を促進できることを明らかにしました。ケイ酸塩化合物は、地球上で最も多く存在する鉱物であり、これまで触媒として考えられていなかった元素の組み合わせでも高性能触媒を実現できることを示す成果であるといえます。
研究成果は2月17日(現地時間)に英国科学誌「Nature Chemistry」オンライン速報版に公開されました。
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