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研究トピックス

2023.05.29 高い発行性能を持つ蛍光体の、特異な構造生成機構を解明

東京工業大学 国際先駆研究機構 元素戦略MDX研究センターの辻昌武大学院生(研究当時。現 特任助教)、金正煥(Junghwan Kim、キム・ジョンファン)助教(研究当時。現・特任准教授、蔚山科学技術院 助教授)、細野秀雄特命教授らの研究チームは、室温でヨウ化セシウム(CsI)とヨウ化銅(CuI)の粉末を混ぜるだけで、高効率で青色発光する蛍光体Cs3Cu2I5が生成することを見出し、この現象を利用して良質な薄膜の室温形成に成功した。さらに、高効率発光の起源となっている銅イオン周囲の特異な構造の生成の機構を解明した。

Cs3Cu2I5は2018年に同研究室が見出した青色蛍光体で、有毒な元素を含まず、発光の量子効率が90%を超え、化学的にも安定という特徴を有する。そのため、フォトディテクター・シンチレーター・青色EL素子用途への応用で近年注目されている。これらの特性は、結晶中の銅イオンがCuI3三角形とCuI4四面体が結合した[Cu2I5]3−二量体の発光中心がセシウムイオンによって孤立している特異な構造が起源である。しかし、このような特異な銅イオンの構造はこれまで例がなく、なぜこの構造が安定に生成するか不明であったことが、材料開発の発展を妨げてきた。

今回の研究で本材料系は室温でも固相反応が促進されることを発見し、高品質な薄膜合成に成功した。また、反応メカニズムの解明過程で、課題であった結晶構造がヨウ化セシウム(CsI)結晶中の隙間に由来することを見出し、今後の新規発光材料の設計指針を示した。

本研究成果は、5月17日付の米国科学誌「Journal of the American Chemical Society」に掲載された。

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