東京工業大学 物質理工学院 材料系の小笠原気八(博士後期課程2年)、元素戦略研究センターの北野政明准教授、細野秀雄栄誉教授らは、カルシウムイミド(CaNH)とニッケル(Ni)を組み合わせることで、既存のNi触媒よりも100℃以上低温でアンモニア分解活性を示す高性能な触媒の開発に成功した。
アンモニア分解反応では貴金属であるルテニウムが触媒として最も優れた性能を示すことが知られている。アンモニア分子との相互作用が弱いニッケル表面では、多くの場合アンモニア分子を活性化するのに600℃以上の高い反応温度が必要だった。
本研究ではニッケルとカルシウムイミドの界面に形成されるNH空孔がアンモニア分子を効率よく活性化し、500℃で90%以上のアンモニア分解率を達成した。今回の研究はNH空孔を反応場として利用する新たな反応メカニズムにより、アンモニア分解反応の低温化が実現できる指針を示す成果である。
近年、水素エネルギー社会の実現へ向けたアンモニアの分解による水素製造技術の開発が盛んだが、希少で高価なルテニウムに依存しない新触媒技術の開発が望まれている。本研究はこの課題に大きく貢献するものである。
研究成果は8月19日に、米国科学誌「ACS Catalysis」にオンライン掲載された。
詳細はこちら